2003年2月28日に発売された『マブラヴ』の続編として、実に3年もの間開発が続けられてきた本作。『マブラヴ』で数多くの謎と、未完とも言えるエンディングをようやく補完するに至りました。 結論から言ってしまうと…『作品としては最高峰で、商品としては最低』という結論に達してしまいます。全体的な出来は確かにすばらしく、よくぞここまでのものを作ってくれたと思っていますが、無視できない欠点があまりに多く、それらを総合すると先の結果が出てしまいます。欠点は大きく分けて二つ。開発期間が長すぎる・描写に一部問題があるの二点で、開発期間に関してはとりあえず置いておいて、描写の問題に入ります。 まず一つ、回想シーンはもうちょっと何とかならなかったのか。あれのおかげで無駄に時間を取られる機会があまりに多く、結果的にプレイ時間を大幅に長くしてしまっています。物語の構成で回想シーンを入れるのはよくあることで、場合によっては絶対必要にもなりますが、本作ではそれがあまりに多い+長いのが問題でした。 同じ回想を何度も入れる箇所がけっこうあり、最後のほうではうざったく感じてしまいました。回想シーンを入れるにしても、回想シーンではボイスを入れない等工夫できる部分があるはずです。回想は効果的でもあり、時に致命的にもなる表現手法なので、気を使ってほしかったところです。 次に、グロテスク描写にも問題があります。グロテスク描写自体は、うまく使えば効果的なスパイスとして非常に役立ちますが、過剰にしてしまうとスパイスが効きすぎて味わいづらくなってしまいます。まりもがBETAに殺害されるシーンも、もう少しフィルターをかけた方法があったはずです。 例 BETA世界ではBETAに背中から串刺しにされる 非BETAではストーカーに包丁等で背中から串刺しにされる 展開上、並な死に方では足りないと感じたと思われますが、それでも本編中の描写はやり過ぎです。たまの殺害方法もかなり酷いものでしたが、それでも多少は見れるレベルでした。同じ展開を用意しても、描写を少しでもフィルターにかけることで、比較的ショックも軽微になるはずです。 そして、商品仕様の中に一切その情報を入れなかった点が一番納得できません。あらかじめ覚悟が出来ていれば対処の仕様がありますが、いきなりあれでは気分が悪くなる人が出ても当然です。中にはそのシーンだけでプレイを止めた人もいるでしょう。『商品』である以上、プレイヤー側を考えて作ることを心がけてほしかったものです。 また、やや過剰な反米描写や死を感動に直結させるシーンが多すぎに感じた点が気になりました。このあたりは完全に製作者の意図になってしまうのでなんとも言えませんが、どうも死の安売りをしているように感じてしまいます。反米に関してはノーコメントで。まぁ、個人的にアメリカは嫌いなんで割りとスカッとした部分はあります。 しかしながら全体的な出来はすばらしく、一般的なロボット物とは一線を画す存在となっている点は非常にすばらしいです。ミリタリー描写が濃い影響でロボット物というより、戦争映画のような展開になっているのも面白かったです。要所要所で入るアニメーションも効果的で、これらがすべて動画ではなくシステム上で動いているということに驚かされました。 そして、なによりも伏線を全て回収している点。細かい謎もほとんど明かしてくれているので、割とすっきりと終わることが出来ました。最後の霞の登場に関しては謎が残っているものの、ここまでくれば自分で解き明かすことも出来るかと思います。言ってしまえばご都合主義的な終わり方なんですが、まぁこれでいいかという気になってしまうのが不思議です。 以上のことから『作品としては最高で、商品としては最低』という結論が出ました。作りたいものを意見に囚われずに作った…という点で見ると、物作りの究極の形であるでしょう。ただ、残念ながら『マブラヴ オルタネイティヴ』は値段をつけて売っている『商品』であり、結果的にユーザーを裏切ってしまっている点は無視できません。ちゃんとした形で物語が終わったことは嬉しいですが、手放しで喜べる状態でないのが残念で仕方がありません。 では『商品』を意識するあまり、ユーザーにとことん媚を売れば…となると、今度は『作品としては最低で、商品としては最高』と逆になってしまい、さらにそういった類はあまり意識されずに市場からあっという間に消えてしまうのが現状です。作品と商品の線引きをどこにするか…作り手として最も難しい問題に一石を投じるものになった本作は、決して無視できない作品となりました。 最後に、マブラヴ オルタネイティヴを製作したアージュのスタッフの方々、マブラヴ オルタネイティヴに関わったすべての方々へ。 すばらしい作品を作っていただき、ありがとうございました。 2006/3/10 ace |